Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

添加物は必要か

本日の気象データ
天気:朝まで雨のち曇り 降水量:24.5 mm 最低気温:12.9℃ 最高気温:24.9℃  平均気温: 17.5℃ 日照時間:166分 (原村アメダス

今日の作業は、誘引、除葉と不要なツルや花穂を落とす作業の続き。それからヴィンヤードを移動して、草刈り後の草の除去。

これまでに、ワインに添加するものとして、亜硫酸と培養酵母について検討しました。それ以外に添加物があるのか?と思われるかもしれません。あるんです。色々と。ラベルには書かれていないものもあります。

醸造資材カタログというのを見ると、培養酵母を使いたくなる気持ちがよくわかります。たくさんの種類の酵母がリストになっていますが、ある製品を使うとブルゴーニュのクラシックな白になるとか、ボルドーの赤!とか、魅力的な言葉が並んでいます。さらに、発酵補助剤、酵母発酵助成剤、酵素、おり下げ剤などなど。でも、ここはブルゴーニュでもボルドーでもないので、その味を再現することにどういう意味があるのかと私は思います。ただ単に安定した発酵のために利用しているケースが多いでしょうし、考え方は人それぞれなので、培養酵母を使うことを否定するものではありません。また、実際培養酵母が使われているワインを飲んでとても美味しいと思うものはたくさんあるので、飲むことも拒否していません。

ディヴィッド・バード著『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』には、果汁調整と添加物にそれぞれ1章ずつ割かれています。順番的には、果汁調整の話をしてから添加物の話をした方がいいのかもしれませんが、これまでの検討過程で何を添加するかしないかを考えてきたので、その流れのまま添加物について検討したいと思います。

と言いながら、最初にこの本の果汁調整の章の冒頭に書かれている文章を少しご紹介したいと思います。

醸造家(中略)たちは、天候に恵まれない年にはブドウ果汁のバランスを保つために、さまざまな醸造工程においてあれこれと手を加えたくなる衝動に駆られてきた。だが、自然は何が最良かを驚くほど知っている。人間は、自然がつくり上げたものを調整できるということを発見したが、それには限度があり、自然なバランスから遠ざかってブドウが持つポテンシャル以上のことを試みれば、必ずワインに悪い影響となって返ってくる。

この文章に続き補糖や補酸・除酸によるデメリットが紹介されています。果汁調整は糖や酸を加除するだけでなく、色々な手法があるので、また別途検討したいと思います。

また、同じ本の中から添加物の章の冒頭の文章をご紹介したいと思います。

きちんと丁寧に造られたワインは安定しているので、酸化と微生物の繁殖を防ぐための添加物以外は必要ない。ワインによってはそれすら必要としないものもある。

なるほど。添加されてもワインに残っていない加工助剤はラベルに記載されていないので、今回は加工助剤はとりあえず除いて、(ヨーロッパで)ラベルに記載義務があるものについて検討します。

まず、どんな添加物があるか、その目的とともに列挙してみます。
二酸化硫黄(亜硫酸):酸化防止
アスコルビン酸(ビタミンC):酸化防止
ソルビン酸:発酵停止
メタ酒石酸:酒石の結晶化防止
クエン酸:鉄滓(ワインに含まれるリン酸と鉄の反応による不溶性化合物)の発生防止
硫酸銅・塩化銀:還元臭の除去
アカシア樹脂(アラビアガム):色調変化の遅延
ペクチン分解酵素:搾汁効率の向上、デブルバージュ(清澄)の作業効率の向上
β‐グルカナーゼ:メンブレン・フィルターの目詰まり防止(灰色カビ病にかかったブドウや貴腐ブドウを醸造に使う場合)
リゾチーム:マロラクティック発酵の遅延・停止、亜硫酸添加の減量

使用目的を見る限り、健全なブドウを使って健全に発酵できれば、そして効率性を重視しなければ、確かに酸化や微生物の繁殖を防ぐための添加物以外は必要なさそうです。我が家にあるワインのボトルを見てみましたが、記載されているのは酸化防止剤として亜硫酸塩とビタミンC、安定剤としてアカシア樹脂ぐらいしかありませんでした。もしそれ以外の添加物の記載があれば、そのワインの醸造過程で問題があったか選果が十分でなかったかを示しているとも言えます。

アスコルビン酸はビタミンCだから、亜硫酸ではなく、体に良いビタミンCを使ったらいいんじゃないかと思いますが、アスコルビン酸は二酸化硫黄(亜硫酸)と一緒に使うことで効果を発揮するもので、二酸化硫黄の代用にはならないそうです。一方、併用することでワインがフレッシュに仕上がるのだとか。

またアカシア樹脂は古代からワインの醸造では使われているそうですが、入れるタイミングを間違えると酒石が結晶化されなくなってしまうという問題があるようです。

そこで、あれ、酒石の結晶化防止と書いてあるメタ酒石酸はなんのために使うの?と思われた方もいるかもしれません。酒石は醸造過程で結晶化されて取り除くものですが(なので醸造過程では結晶化されないと困る)、瓶詰した後に瓶の中で結晶化してしまうと困る(品質にはあまり影響がないですが、異物が混入しているように見えるので、クレームの原因になります)のでメタ酒石酸を使うようです。

添加物を醸造過程で問題が生じたときに使うかどうかですが、問題が生じないように丁寧に醸造することが重要で、最初から使うつもりでいてはいけない気がします。なので、酸化防止剤以外は使用しない方向で進めたいと思います。今回検討しなかった加工助剤はどんな場合に必要なのか、改めて別の機会に検討してみたいと思います。