Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

亜硫酸を使わないすばらしいワイン造りの前提

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今日、千曲川ワインアカデミーでは醸造プロセスについて、白も赤もそしてスパークリングワインも一通り終わりました。一連の講義を経て強く思ったことはふたつ。ひとつは、どんなワインを造るにしても、よいブドウを栽培して収穫しなければよいワインはできないということ。もう一つは〇〇ありきで考えてはいけないということ。この学びについては、また追々深めていくとして、しばらく横道に逸れていたアルノ・イメレ著『亜硫酸を使わないすばらしいワイン造り』に戻って、すばらしいワイン造りについて検討をしたいと思います。

横道に逸れる前はずっと亜硫酸を使わないと言いつつ、亜硫酸のことを検討していました。今回は、『亜硫酸を使わないすばらしいワイン造り』の「前提」の話。

この本によれば、大きく2つの前提があります。

ひとつは、これまでも何度か書いてきましたが、「良いワインづくりはよいブドウづくりから」というわけで、よいブドウが必要です。著者の言う「よいワイン」は、「とても繊細な資質を表現するワイン」であり、「よいブドウ」は「ビオ(有機)栽培のブドウ」です。繊細な資質を表現するワインを造るために、なぜ有機栽培のブドウが必要なのか?明確に書かれているのは、「還元臭」(ワインの栓を開けたときに漂う不快な香り)の多くが殺虫剤に起因しているので、そういったものを栽培中に使用しないということです。また、収穫時のブドウの品質については「ブドウのフェノール成熟や生理面での成熟が必要不可欠」とも書かれています。よく、ワインは糖と酸と香り成分のバランスが重要と言われますが、完成したワインをバランスよく仕上げるためには、そもそもブドウ収穫時のバランスが重要ということですね。明確には書かれていないものの、文脈から、病果(カビが生えているなど)を取り去ることも必要そうです(当たり前か…)。

もうひとつの前提は、「まずは最初の段階として、醸造補助剤を使用」するという点です。醸造補助剤とは、発酵に必要な酵母や乳酸菌を入れたり、清澄のために酵素を使用したり、残留物除去のために活性炭を使ったり…、醸造中の問題を回避するための補助的な資材です。様々な介入もするし、その介入のために時に人工的に造られた醸造補助剤も使ってよしということ。その心は、亜硫酸を使わないで醸造するには、一般的に行われている醸造技術以上の技術が必要で、将来的にこういった醸造補助剤を減らしていく/使わないにしても、その醸造技術を習得するまでの間は、一定程度醸造補助剤を使うことで、ワイン品質の安定化を図る必要があるということのようです。

亜硫酸を使わない=何も添加しないということではないし、亜硫酸を使わないからこそ、一般的な醸造よりもいっそうワインの状態の安定化のためにやらなければならないことがあるということなのでしょう。この著者は、亜硫酸は体に悪いので入れたくない。でも、それ以外の醸造補助剤は基本的にそんなに体に悪いものではないので、品質安定化のために必要。また、人工的に造られたものであろうと、醸造プロセスで自然とできたものであろうと、同じ物質ならば化学的には同じもの…という基本的な考えを持っているので、この前提は理解できます。

いずれにしても、この本を読むことでワイン醸造中と完成後のリスクとその回避方法を知ることができそうです。