Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

ブドウの中の窒素の役割

本日の気象データ
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平均気温: 18.2℃ 日照時間:242分 (原村アメダス

今日は千曲川ワインアカデミーの講義日でした。内容は白ワインの醸造。講義は完全醸造モードですが、まだ自分の中で何をどこまで許すのかのラインができていません。でも、今日のお話の中で一番心に響いた言葉は、醸造中に何かを加えたり、介入したり、あるいはブレンドしたりすることで美味しいワインを造ることが可能だと思ってブドウを栽培するのと、そういったことができないと思って栽培するのとでは、できるブドウが違う(講師の先生がおっしゃった言葉のままではなく、私が理解した言葉です)という点でした。収穫したブドウをつぶさないように収穫用のかごや容器の形状にも気を遣わなければいけないのか…と新たな発見もありました。醸造の話なのですが、やっぱり美味しいワインを造るには、よいブドウを栽培することが重要だというところに戻ってきました。

ブドウ栽培を考えるうえで、醸造の観点から一つ重要な点に気づくことができました。それが、ブドウを発酵させるためには酵母やその他の微生物に働いてもらう必要があり、そのための栄養素がブドウ果汁の中に必要だということです。とりわけ、ブドウ果汁に含まれる窒素の役割が重要だということを知りました。いや、その情報に触れたのはもっともっと前のはずなんですが…。実は半年以上前に読んだディヴィッド・バード著『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』の中にも書かれていました。漫然と読んでいると頭に残らないものですね。以下内容は、同著より。

これまでの記事の中には、酸化防止剤として亜硫酸とかアスコルビン酸については触れました。そういったものを添加する以外にも、醸造中の酸化を防止するために窒素ガスをタンクの中に入れたりすることもあります。ただ、この窒素(N2)と酵母が栄養素として使う窒素は別のものです。後者は窒素と呼ばれていますが、より厳密に言うとアンモニウム化合物(NH4)の形をした結合窒素です。

酵母は自らの細胞内でアミノ酸とタンパク質を生成して増えるのですが、その際にこの窒素が栄養として必要になります。発酵中に酵母が必要とする栄養が不足すると、酵母はストレス状態になって硫化水素を作り、不快な臭いを発生させます。また、窒素以外にも酵母を増やすために大切な栄養素としてはチアミン(ビタミンB1)があります。

こういったものは基本的にブドウ(果実)に含まれています。なので良いブドウを作ることが必要なのですが、ブドウはこういった栄養素を土壌から吸い上げたり光合成をしたりして自分の果実の中にため込んでいきます。窒素が土壌になければ吸い上げることができないので、ブドウは窒素不足となります。

足りない場合はどうするか?そうです、添加することになります。EUの基準では、アンモニウム化合物の添加は一定量(上限1g/L)認められており、窒素以外にもリン酸二アンモニウムや硫化アンモニウムを添加することで改善可能なのだそうです。ちなみにチアミンの添加も認められています(上限0.6mg/L)。

しかし、なるべく添加物を加えないでワインを造ろうと思うなら、足りなくならないようにブドウを栽培するに限ります。そこで疑問に思うのが、本当にブドウ栽培にはやせた土地が向いているのか…という点です。これに関して、最近、ドイツの面白い記事を見つけたので、それをベースに検討したいと思います。でも今日はもう長くなってしまったので、また後日。