Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

マンゴーの香りのするワイン

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平均気温: 19.5℃ 日照時間:762分 (原村アメダス

今日は千曲川ワインアカデミーの講義の日。テイスティング実習でした。飲んだことがあるワインもありましたが、聞いたこともない品種も多く、なかなか面白い体験ができました。今回のテイスティングは品種を当てるゲームのようなものではなく、どういう特徴があるかをキチンと言えるようになるようにすること、またその特徴はどういう醸造プロセスを踏むと出てくるものなのかを知ることが中心だったので、色々と学びが多かったです。

どうしてもワインを飲むと、五味(酸味が強い/弱い、ドライ/甘いなど)や渋みに関する説明をしがちだけれど、それだけでは何も説明していないに等しいんだなぁと。醸造中のワインの味を的確にとらえて、ワインを造っていくということも大事ですが、自分の造ったワインを的確に説明して、お客様に提案していく能力も身に着けなければいけません。その言葉選びも難しいし、そもそも語彙力のなさを痛感しました。

テイスティングと言えば「ブラックチェリー」「マンゴー」「ピーマン」など、別の食品に味を例えて表現することが多いです。私はこの「マンゴー」を聞くたびに、この人マンゴー食べたことあるのかなぁと思ってしまうのです。特に「マンゴーやパパイヤの香り」と言われると、その二つ、全然香り違うじゃん…と。

フィリピンに住んでいたころ、毎日のようにいわゆるトロピカルフルーツ、とりわけ一年中いつでも安価に手に入るマンゴーとパパイヤを食べていたので、一般的な日本人や欧米人よりも、たぶんたくさんのトロピカルフルーツを食べてきました。しかも、日本で時々売っている輸入物のマンゴーなどと違い、現地で食べるマンゴーは完熟状態であることが多いという点も違います(国産の高級マンゴーはまたフィリピンのマンゴーとは全然違う香りがします)。さらに、マンゴーやパパイヤには種類がいっぱいあって、また熟度によっても料理での使われ方が違います。また、ジャングルの中ではなく南国の都市にある高層マンションで食べたとしても、やはり日本とは全く違う空気や雰囲気の中で食べれば、その食べ物に対する印象や味、香りも変わります。

そう、味や香りは、その人の経験や食べるときの雰囲気などによって変わるのです。しかし、もしソムリエが、香りは化学物質なので「このワインは、シトロネロールの香りが強く、このブドウ本来の香りが楽しめます」「このワインはエチルヘキサノエイトの香りが強いですが、この香り、日本酒でも嗅いだことありませんか?」などと説明したならば、まず、このワイン、化学的に合成されたんじゃないかと思ってしまいそうです。だいたい、その物質名、知りませんって人、多いですよね。どうしても、多くの人が共通に知っている言語で説明せざるを得ず、またイメージしやすい言葉を選んで説明することが重要なんですね。

東原和成氏などによって共著で書かれた『ワインの香り』という本では面白い取り組みがされていて、一般的な日本人がわかる食べ物や花などの香りで日本のワインアロマホイールを再構成しています。何に由来する香りなのかがわかると、どうやって醸造されたのかもわかるようになります。ただ、香り成分は別の香り成分と合わさると、違う香りに感じるため、何と何が合わさるとその香りになるかも知らなければなりません。つまり、まずは個別の香り成分そのものの香りを知ること、どうしてその香りが生成されるのかを知ること、そのうえで何と何が合わさるとそう香るのかを知ること、そして実際のワインの中にその香りがあるか探すこと…。ソムリエの訓練って大変なのねぇと思いますが、「ソムリエでじゃなくても、(訓練すれば)ワインの香りを表現できる!」と帯に書いてあるので、きっと普通の人でも訓練すれば、的確に説明できるようになるのでしょう。香りの勉強もしないとなぁ。