Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

天然酵母/自然酵母とは

本日の気象データ
天気:未明まで雨。日中、晴れ。夕方から曇り 降水量:2.0 mm 最低気温:11.2℃ 
最高気温:24.7℃  平均気温: 17.5℃ 日照時間:640分 (原村アメダス

今日は所用のため、作業はお休み。

昨日は、発酵と酵母について考え、ワインを醸造するためにはサッカロマイセス・セレビシエという酵母が必要であること、天然酵母にはそれ以外の酵母も含まれていて、それが味の複雑性を高めている可能性があることなどを勉強しました。

pooh-chan-51.hatenablog.com

今日は天然酵母(自然酵母)について考えたいと思います。

そもそも酵母とは、土の中にもブドウ樹にも、その他あらゆるところに存在しています。ただ、酵母の種類は環境に左右されるので、同じ場所でも年によって違うようです。自然発酵をするということは、ブドウに付着している野生の酵母を発酵の過程で増殖させるということなので、当然ながら健康状態のよい酵母がたくさんいないとうまく発酵させることができないということです。また、様々な種類の、しかも良質な微生物が存在することによって複雑な風味を出すことができます。

ディヴィッド・バード著『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』によれば、「自然発酵でも通常、発酵前のブドウ果汁に二酸化硫黄を添加することで、発酵の邪魔をする細菌を死滅させる。そうしてアルコール発酵を開始する環境が整うと、大量に存在する酵母群が発酵を開始する。しかし酵母群の一部にはアルコール耐性が弱いものがおり、アルコール度数が3~4%に達すると活動を停止してしまう。最後まで発酵を成し遂げるのはサッカロミセス・セレビシエ(サッカロマイセス・セレビシエ)だ。だが、この酵母には畑ごと、さらには収穫年によっても様々に異なる亜種が存在する。かように自然発酵は不安定で予測が難しい側面がある…(後略)」とあります。

結局、最後に残るのはサッカロマイセス・セレビシエなのだけれど、培養酵母のように天然酵母の中に含まれるリスクのある微生物を取り除いたり、特定の風味を出したり生産過程を早めるように調整されていないので、発酵が不安定であることが一番の課題のようです。また『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』に書かれているように、発酵前のブドウ果汁に亜硫酸(二酸化硫黄)を添加するならば、邪魔な細菌はいなくなるので管理は多少しやすくなるかもしれないけれど、ある程度複雑さが失われるのは避けられなそうです。一方、風味のコントロールがしにくいので、複雑さ=単なる雑味になってしまう可能性があることも否めません。

何よりも天然酵母を使う一番の魅力は、その酵母はその畑にしかいない、そしてそのヴィンテージにしかいない酵母だということです。テロワールについて色々議論がありますが、天然酵母を使えば八ヶ岳西麓の味を表現できるかもしれません。また、その年がどんな気候で畑がどんな環境だったのかを表現することもできます。安定した品質を確保することは難しいかもしれませんが、何を表現したいかによっては、天然酵母の方が優れている可能性もあります。ほかの要素も含めて、引き続き検討したいと思います。