Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

山梨のヴィンヤード見学

本日の気象データ

天気:晴れ時々曇り 降水量:0.0 mm 最低気温:11.6℃ 最高気温:24.6℃ 
平均気温: 16.8℃ 日照時間:335分 (原村アメダス

今日は、山梨にある某ワイナリーのヴィンヤードを見学に行きました。ヴィンヤードのあるじは千曲川ワインアカデミーの講師もされており、講義の中での説明を聞く限り、とてもしっかりとした理念・哲学のもとに有機農業/自然農法で畑を管理し、無添加のワインをつくっているようなので、どんな畑なのか見てみたくなりました。

そもそもワインをつくっている人は、往々にしてこういうワインがつくりたい、こういうワインを飲みたいと思ってこの世界に入ったわけで、これまでにトライ&エラーを繰り返してたどり着いた何らかの哲学を持っている人が多いです。研修先のあるじもそう。そして、ヴィンヤード見学に行けば、それぞれの理念や哲学に基づいて畑を管理しているので、十人十色のやり方があります。今日も「あちこち見学するとわからなくなるよ~」と言われましたが、要は自分はこれでやる!と確信が持てれば、誰がどのようにやっているかにかかわらず、自分が美味しいと思うワインをつくるためにどういう畑の管理・作業をするかということも自ずと決まるのではないかと思いました。

有機農業とか自然農法というのは、類似の言葉がたくさんあって、それぞれに提唱者がいて、それぞれに定義があるので、非常にあいまいな用語です。有機農業という言葉一つとっても定義が複数あります。今日訪問したヴィンヤードのあるじは、畑やブドウ樹をよく観察し、なるべく自然の営みに任せ、サポートが必要なところにだけ人間が手を貸すという考えで畑やブドウ樹を管理していました。複数の畑でブドウを栽培しているので、畑の状況によって草刈りをする/しない、粗皮むきをする/しない、芽かきをする/しないといった判断をするとのこと。

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(写真:誘引作業中。山梨は醸造用ブドウ栽培も棚でやっているところが多い。この圃場のブドウ品種は主にカベルネ・フラン

自然農法というものに関し個人的に腑に落ちていなかったことは、そもそも醸造用ブドウ栽培というのは、生態系の外にあるものを持ち込むのに、生態系を維持しつつ、その生態系の営みをサポートするような農業のやり方/あり方ってのはあるのだろうか?ということだったので、まずはその点をぶつけてみました。回答は「そもそも農業はブドウに限らず、自然じゃないという前提に立たなければならない。そのうえで、不自然な農業を自然により近い状態でやることによって、自然の力を借りるということ。自然に近い状態というのは放置とは違う」というものでした。ブドウ樹そのものに対しては、なるべく手を出さずに、ポテンシャルを引き出すことに尽力するというのが根本にあるようでした。「美味しいワインをつくるために一番大事なのは、産地に合った品種を植えることであって、手をかけたからといって美味しいワインができるわけではない」という言葉が印象的でした。その理由として、かつてブルゴーニュに行ったときのお話を伺うことができました。要はグランクリュの生産者といわゆる村名や地方名格付けの生産者はやっていることは同じで、グランクリュだから特別に手をかけているわけではないということを自分の目で確かめてきたというお話。

醸造においても然り。味を調整するために補糖したり、酵母を入れたりする醸造家もいる中、訪問先のあるじは酸化防止のための亜硫酸も含め、何も入れないとのことでした。また、必ずしも設備にお金をかける必要もないと(もちろんかけられればそれに越したことはないけれど)。やるべきことは、細かい作業/醸造技術でワインを管理すること。そのために(つまり自然発酵をスムーズに行うために)自然農法でブドウを栽培する。

一緒に作業をしていた若いお弟子さんたちのお話も聞くことができました。皆さん、迷いや苦しみもあるけど、どこかすがすがしく、目が輝いていて、苦労も含めて楽しんでいるのが印象的でした。よい刺激になった1日でした。