Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

防除について ②醸造用ブドウの病気を知る

本日の気象データ
天気:曇り 降水量:0.0 mm 最低気温:9.5℃ 最高気温:18.8℃ 
平均気温: 13.6℃ 日照時間:196分 (原村アメダス

今日の作業も芽かきの続き。そして午前中は昨日に引き続き、中学生たちが農業体験にやってきました。今日は一段とスピードアップして、畑全体の草刈りが完了しました。

ブログは防除の続き。今日は醸造用ブドウの病気についてです。愛読している日本ブドウ・ワイン学会監修『醸造用ブドウ栽培の手引き』には非生物性病原(土壌条件、気象条件、農作業による障害など)、生物性病原(糸状菌、細菌)、そしてウイルス性病原に分類されると書かれています。ちょっと難しいですが原因がわからないと対策がたてられないので頑張って勉強するしかありません。

このうち、生物性病原による病気に関して、原村ではうどんこ病、べと病、根頭がんしゅ病などが主な病気として確認されています。あまり果樹栽培の歴史が長くない原村では、主要な病気と言われている多くの病気がまだ蔓延していないようです。うどんこ病もべと病もそれぞれブドウうどんこ病菌、ブドウべと病菌という絶対寄宿菌が病原菌で、ブドウ以外には感染しないそうです。これを読んで、うどんこ病って他の植物でも感染するって聞いたことがあると思ったのですが、様々な植物に生じる病気なのに、それぞれ病原菌が違って種をまたいでの感染はないのだそうです。マイナビ農業に詳しく出ていました。

agri.mynavi.jp

原村では、うどんこ病は梅雨入りするころに発生しやすいそうです。最初にタンポポや赤い花の咲くクローバーに発病するので、それらに白いうどんこのような菌体を発見したら要注意。発病に関して、マイナビ農業のうどんこ病の説明には「カビの一種でありながら乾燥した環境を好む」と書かれている一方、『醸造用ブドウ栽培の手引き』には「高温多湿で発病が助長される」とあるので、乾燥させないほうが良いのか、多湿にならないほうが良いのか悩ましいところです。醸造用ブドウ栽培に特化した本の方が信頼できそうな気もするので、やはり風通しを良くして日当たりをよくすることに努めた方がよいのかなと思っています。いずれにしても、農薬を使うのであれば梅雨に入る前に予防的に農薬を散布し、8月下旬ごろまで定期的(特に雨が降る前)に散布する必要があるようです。ただ、耐性菌発生リスクが高いそうで、同じ農薬を連続して散布するのは避けなければならないとのこと。マイナビ農業に書かれているお酢重曹で「治療」することができるのか、いずれ自分の畑を持つ日が来たら実験してみたいものです。

次にべと病について。こちらは原村では梅雨明けのころから発病するようです。『醸造用ブドウ栽培の手引き』には「低温多雨で感染が促進される」とあります。こちらも様々な農薬が存在するようですが、海外の事例で既に耐性菌が確認されているため、うどんこ病と同じく、同じ農薬を連続散布することは避けなければなりません。べと病に関しては、耕種的な防除方法も『醸造用ブドウ栽培の手引き』に紹介されています。ブドウべと病の病原菌は、感染した葉っぱやツルがそのまま畑に残っている場合に、それらの中で越冬するそうです。越冬した病原菌が春以降に風雨により葉や花穂にうつって発病するという仕組みです。なので、越冬させないように、葉やツルを冬になる前に取り除くことで感染を防ぐことができます。

もう一つの根頭がんしゅ病は、糸状菌が原因であるうどんこ病やべと病と違い、細菌によるものです。本には「土壌伝染性」と書かれています。つまり汚染土壌から根の傷を通じて感染するとのこと。この菌の生態の詳細は不明で、適用できる農薬もないのだそうです。したがって、対策としては感染してしまったブドウ樹を除去するしかない!しかも、土壌中に何らかの感染したものが残っていると、その中で少なくとも2年間はこの菌が生存するので、除去したところにすぐに新しい苗木を植えると、また感染してしまうのだそうです。

気候や環境が違えば主に発生する病気の種類や時期も異なります。従来からのブドウの産地ではブドウに特化した防除暦というものが整備されているようですが、原村ではこれまで果樹そのものを育ててこなかったので、ブドウ栽培の歴史も長くなく、それぞれの農家がこれまでの作業記録をもとに防除暦を独自に作っているという状況のようです。周囲にいるブドウ農家の方々に話を聞きながら、失敗もしながら、経験を重ねていくしかないのかなあ…。