Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

仕立てと剪定法について

本日の気象データ

天気:雨 降水量:52.5 mm 最低気温:14.1℃(2時)最高気温:17.9℃ 
平均気温:15.8℃ 日照時間:0分 (原村アメダス

 

明日は月曜日。予定されている作業は「芽かき」です。以前ご紹介した『醸造用ブドウ栽培の手引き』には4月の萌芽期を過ぎ、5月の展葉期になると新梢がどんどん伸びるので、新梢が地表から2段目のワイヤーを越えるくらいの長さに達したら芽かきを行うとあります。芽かきそのものについては、明日の作業を終えてから記載するとして、同著によれば品種や仕立て方、剪定法により取り除く新梢の数が異なるとのこと。なので、事前に仕立て方と剪定法について勉強しておこうと思います。

そもそも仕立て方の前に、栽培方式は棚か垣根かという問題があります。一般的に醸造用ブドウって垣根だよねと思われるかもしれませんが、日本には醸造用ブドウでも棚栽培をしているケースが結構あります。

棚栽培では、1本の樹を大きく育て、その樹にたくさん実をつけさせます。なので、生育が旺盛な(樹勢が強い)品種(例:甲州)の場合、棚栽培が適していると言われています。というのは、樹勢が強い品種を狭い範囲で栽培(垣根栽培)すると栄養成長(枝が伸びていくプロセス)が優勢になってしまい生殖成長(果実が甘く熟すまでのプロセス)がうまくいかないからだそうです。棚栽培のメリットは、単位面積当たりのブドウ収穫量が垣根栽培に比べ約2倍であること、デメリットは架設費用が高額で、ほとんどの栽培作業が手作業になることがあげられています。

垣根栽培のメリットは、一部作業の機械化が可能になること、立った姿勢で作業できるため作業性がよいこと、デメリットは単位面積当たりの収穫量が少ないことです。しかし、収穫量が少ない反面、全体の作業時間が少なくて済むのでコスパがよいとも言われています。ただし、特に日本のように畑の養分が多く、雨が多いところでは、台木や品種、仕立て、剪定などをよく検討して樹勢をコントロールしなければなりません。

私は相対的に樹勢が弱い欧州品種のブドウを育てたいと思っているので、栽培方式は垣根を考えています。垣根の場合、代表的な仕立て方式にギュイヨ(Guyot:長梢剪定)とコルドン(Cordon:短梢剪定)があります。さらに主幹の片側1本だけ伸ばすサンプル(Simple)と両側に2本伸ばすドゥーブル(Double)があります(プサールというのもありますが、また後日)。ギュイヨとコルドンの見た目上の違いは、ざっくり言うと主幹から伸びた主枝の長さと結果母枝の長さです。例えばいずれもドゥーブルの場合、教科書のイラストは左右に枝が伸びているように見えますが、ギュイヨの場合(下図左)は主幹の両側に2本の短い主枝があり、その先端から2本の結果母枝を長く伸ばす一方、コルドン(下図右)は主幹の両側に長く伸ばした主枝があり、そこに等間隔に芽座(昨年の短く残した結果母枝)を配置し、それぞれの芽座に1~2芽つけた短い結果母枝を残すという違いがあります。

(出所:日本ブドウ・ワイン学会監修『醸造用ブドウ栽培の手引き』)

アカデミーの講義でも前出の本の中でも、コルドンは芽かきは大変だけれどもそれ以外の作業が容易なため、比較的大規模なヴィンヤードや初心者にもお勧めという説明がされています。ただし、寒冷地には不向きで品種や台木を選ぶ必要があるという説明もありました。農業初心者である私はこの作業性のメリットを考え、コルドンにしようと思っていたのですが、まだ定まっていないものの植えたい品種や気候のことを考えるとギュイヨを採用したほうが良さそうな感じがします。一方、SICAVAC著『ブドウ樹の生理と剪定方法』によれば、フランスでは樹勢の強い、ブドウをたくさんつける性格の樹はコルドンにして収量を抑えるという説明もあるので、品種によって仕立てを変えることも検討したほうが良さそうです。