Adagioな日々

ワインづくり奮闘記 そしてときどきピアノ

皮むきと台木の移植

本日の気象データ

天気:晴れ 降水量:0.0 mm 最低気温:-0.2℃ 最高気温:22.7℃ 
平均気温:11.4℃ 日照時間:736分 (原村アメダス) その他:降霜あり

 

研修2日目。今日の作業は、昨日の続きから。

 

pooh-chan-51.hatenablog.com

 

昨日の続き…そうです。昨日は草刈り(厳密に言えば、私が刈ったわけではなく刈られた草を熊手で集めるだけですが)も担当畝のブドウの木の根元の皮むきも終わっていなかったのでした。なので、いずれの作業もやりましたが、そのうち皮むきのほうは終わったので、今日はそのお話です。

この皮むき作業について、醸造用ブドウ栽培の本を何冊かひっくり返してみてみたものの、作業暦のような項目を読んでも、あまり記載されていない作業項目です。しかし、4月のアカデミーでの病虫害対策の講義の中でさらっと「冬季に粗皮むきをすると害虫対策になります」という説明がありました。樹皮の下に卵を産み付けられてしまうのを防ぐことが目的とのこと。とりあえずノートにメモったものの、実際にやってみないと腑に落ちないものです。

今回、この作業の中では単に皮むきをするだけでなく、1本1本の木の根元に根頭がんしゅ病がないか、また芽のつき方がどうかを確認しながら進めました。

根頭がんしゅ病については、アカデミーでもすでに講義で聞いていたものの、実際に見ても経験がないとなかなか自分では判断できないものでした。

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          (根頭がんしゅ菌疑いとされた木の根元)

日本ブドウ・ワイン学会監修の『醸造用ブドウ栽培の手引き』には、ブドウを主たる宿主とする細菌であり、この菌に汚染された土壌から根の傷を通して感染すると記載されております。根に侵入した細菌が維管束(この言葉、理科の授業で聞いて以来久しぶりです!)を通って地上部に達し、接ぎ木部分の付近を中心とする樹幹の粗皮下や芽吹き後の傷に乳白色から淡褐色の柔らかいこぶを形成し、時間がたつと暗褐色で不整形の大きなこぶに成長するそうです。この大きなこぶをがんしゅと呼ぶのだそう。しかし、小さいこぶは本当に感染しているのか、下の方の芽の塊がこぶ状に見えるだけなのかよくわからないのです。健康診断で胃に小さいこぶがあるので経過観察しましょうと言われるような状態なので、ピンクのテープでしるしをつけて経過観察をすることに。

もう一つのチェックポイントは芽のつきかたです。

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この写真、担当しているブドウのうちの1本です。左右に伸びた枝にそれぞれ芽が出ていますが、これがすべて同じように育っている(芽吹いている)ことが望ましい姿です。しかし、この写真(見にくいですが)左の枝の先のほうの芽のほうが大きく、ほかの芽と生育進度が違います。植物はどうしても大きくなろうとして先端部分の方がより成長していく性質があります。家庭菜園で野菜や果樹を育てていても同じ現象を見ることはできますが、そういうもんだと思って通常終わりです。でも、醸造用ブドウの場合(あるいは商品として作物を育てる場合と言ってもいいかもしれません)きちんと成長をコントロールしてやる必要があります。木やその周囲を観察する、そこから栄養状況や病害虫の影響の有無を知る、そして分析して対策を取る。農業ってすごく奥が深い仕事です。

そして、もう一つ、今日は新しいことをしました。台木の移植です。ブドウは通常台木に接ぎ木をして栽培します(台木や品種の話は追々します)。

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これは移植後の写真になります。最初に直径30㎝ほど、深さ30㎝ほどの穴をシャベルで掘ります。そしてその穴の中心に、例えば穴よりも一回りか二回り小さい植木鉢に土を入れてひっくり返して少し山を作ってあげます。その山の上にブドウの苗(今回は台木)を置くのですが、その前に苗の根をきれいに整える(要は切ってしまう)作業をします。植物の根は一度曲がってしまうと曲がったところはずっと曲がったままでまっすぐに伸びたり別の方向に伸びることはないそうです。別の方向に伸びるときは曲がった先の部分が別の方向に伸びていくだけなのだとは知りませんでした。根が曲がっていると上の方に伸びてきてしまった場合、特に表層部分は雨水などの影響を受けやすいため、木が容易に水分を得られるようになり不都合なのです。というのも、比較的乾燥して厳しい条件のほうがおいしいブドウができる一方、ブドウも植物ですから容易に水分が得られると知れば、容易な道を選択してしまうからです。というわけで、根を短くしてしまうため、この穴の中の山が必要になるわけです。そして、山から下に向かってきれいに根が下りるように置いてやります。そして、土を入れて水をたっぷりかけて、さらに土をかけて水をたっぷりかけて終わりです。

今日は草刈り作業もだいぶスピードアップしました。明日には終わるかな。